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試験機向けカップリング


自動車産業の近代的な駆動系の開発は、設計者にとって大きな課題です。特定の条件を満たす部品1つを開発するのに、設計や計算は複雑さを増すばかり。試験機はこのような状況で重要な役割を果たします。試験機に使用される部品は、最高の性能を発揮する必要があります。カップリングメーカーR+Wは、そんな用途にぴったりの様々な製品をご用意しております。


試験機は、精密な試験、高精度な工程や寸法測定、柔軟性など、最高の条件を満たすためにあらゆることをこなす必要があります。そのためには、効率的で信頼性の高い、高性能なカップリングが必要です。カップリングメーカーは多くの試験に対応できる試験機に適したカップリングを提供するのに、設計・開発の際に技術仕様を複雑に組み合わせる必要があります。トルク、速度、バランス、剛性、ミスアライメント、慣性モーメント、スペースなどは、考慮すべき事項のうち、ほんの一部です。ある大手自動二輪車メーカーがR+Wに依頼をした案件では、高性能レース用エンジンを組み立て試験機で確実に試験と検査ができるように、再現性、制御性能、およびシステムダイナミクスに関して最高の水準を満たす必要がありました。この複雑な試験には、特殊品の製作が必要でした。

 

軽量設計と高性能材料

R+Wが技術系大学と共同で開発したMSLシリーズは、このような厳しい要求の用途に理想的な製品です。先端素材と特殊塗料を組み合わせた、軽量かつ小型で強力な設計。ボールソケットの原理により、ゼロバックラッシで安全に作動します。先端素材と特殊塗料によりMSKシリーズに比べて最大60%の軽量化を実現しています。例えば、MSLPの呼びトルク30は、トルク調整範囲は最大135Nm、質量200g、慣性モーメント0.1×10-3kgm2です。本体とフランジの特殊加工により、繰り返し精度+/-5%でミリ秒以内に反応できる安全クラッチを実現しています。MSLシリーズの安全クラッチは、許容トルクと寸法および質量の比率が世界市場においても他に類を見ないものとなっています。

 

精度向上のためのモジュール設計

レース用エンジン試験機の基本的な設計は、大量生産車のメーカーによって使用されているものとほぼ同じでしたが、この用途では700N・mのトルク、最大16,000r/minの回転速度をゼロバックラッシかつ高い剛性を維持したまま正確に伝達するという、非常に高い精度で大きな負荷を処理する必要がありました。軸を締結し、偏心、偏角、エンドプレイを許容するには、できるだけコンパクトな「ダブル」設計が必要でした。また、重量は最大でも5kgという制限と、非常に高いバランス等級も考慮しなければなりませんでした。その後、試験機上のすべての部品がうまく動作することを確実にするために、あらかじめバランス取りされたカップリングは、組み立て後に駆動系全体として再度バランス取りを行いました。

R+Wの技術者は、MLP3タイプの板ばね形カップリング(図1)を基に、条件をすべて満たす特殊品の開発に成功しました。高性能材料で製造され、回転対称構造のテーパーロックハブ使用したコンパクトで軽量のカップリングは、スペースと重量の制限を満たしながら、ゼロバックラッシで信頼性の高いトルク伝達を保証します。全体的な精度を実現するために、バランスウエイトを取り付けるための特殊な穴を設けました。これによって、組み立て後にカップリングの質量を変更して再度バランス取りを行うことが可能になります。耐久性の高い製品が新たに開発されたことにより、試験担当者は高性能エンジンの能力を試し、ようやくスタートラインに立つことができます。

 

トルク過負荷からの保護もカスタマイズで

トルクを遮断する安全クラッチは、試験機で使用される精密カップリングの一歩先を行きます。トルク計やギヤなどの駆動系部品を、トルク過負荷や設備故障による損傷から保護します。その結果、設備停止時間が短縮され、稼働率が向上します。

ある自動車業界のお客様の例では特殊な安全クラッチが採用されましたが、この用途でも、精度、サイズ、トルク、回転速度の条件を再考する必要がありました。結果、重工業分野安全クラッチMSTシリーズ(図2)の強化版が開発されました。このシリーズには、等間隔に配置された耐久性の高いトルクモジュールがあり、特に高トルク向けの用途に合わせて設計されています。また、7,000r/minの回転速度で確実に作動する必要がある上、トルク過負荷が発生した場合は2,000N・mの遮断トルクで駆動被動間を安全に切断しなければならないため、トルクモジュールはいっそう重要な役割を担っています。

特殊品は、標準品よりもコンパクトに設計されているため、非常に狭い空間にも取り付けが可能です。今回のカップリングは、外径わずか200mm、全長(付属品含む)263mm、最高回転速度7,000r/min、許容トルクは3,000N・mです。板ばねが内蔵されており、軸のミスアライメントを許容します。特にコンパクトであることに加え、ブレーキディスクなどの特殊な部品との締結が可能です。以前使用されていた他社製品とは対照的に、R+Wの製品には付属品も当初から含めて設計されました。完成品として、お客様はアダプタフランジなどによる不要な質量を排除し、コストも削減できました。

重工業分野MSTシリーズ安全クラッチは、標準で最大25Nmの遮断トルクに対応可能なボールソケット式クラッチです。特殊品の場合は、さらに高い遮断トルクも実現可能です。カップリングの円周上に等間隔で配置された耐久性の高いトルクモジュール(3)には、実質的にトルクの上限はないと言ってもよいほどです。トルク過負荷が発生した場合、あらかじめ荷重が与えられた安全クラッチ内のクラッチボールは、それぞれのソケットから押し出され、駆動被動間を完全に遮断します。プランジャの背面に取り付ける追加のスイッチプレートを利用すれば、センサまたはリミットスイッチによってカップリングが遮断されたかどうかを確認することができます。設備が停止したのを確認し、プランジャの背面に軸方向の力を加えれば、再連結が可能です。必要であれば、遮断トルクは簡単に調整できます。

 

多様性と開発と最適化  

R+Wの品ぞろえは、お客様の条件に応じて変化します。ここで説明したシリーズに加えて、例えば0.1~2,800N・mの小さな安全クラッチもご用意しております。安全クラッチだけでなく、さまざまなベローズ形カップリング、エラストマ形カップリング、歯車形カップリング、長尺形カップリング、板ばね形カップリングなどがあり、どんな用途にも適した製品をお客様に提供します。R+Wでは、今後の動向やますます厳しくなる条件に対応するため、お客様のご要望に応じて新製品や特殊な製品の研究開発部門を別に設けており、社内の静的/動的試験機では、さまざまな製品テストを実施することができます。R+Wには、あらゆる種類の試験機を最適化するのに適切なカップリングを選択するための知識と経験があります。よってお客様は確実な計画を立て、コストを最小限に抑えることができるのです。

 

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