MK/MFK|記事一覧
信頼性はこれまでにないほどオイシイ
食品加工産業では、完成品の品質を安定して維持するために、信頼性は衛生とならんで重要な役割を果たします。安全クラッチは、デリケートな生産ラインをコストのかかる設備故障や破損から保護するのに役立ちます。
デリケートなチョコレートが口の中で溶けてしまう前に、絶対的な精度で多くの製造工程を通過しなければなりません。チョコレートの製造工程は一般的に、原料となる焙煎したカカオ豆が包装された板チョコになるまでに長い道のりをたどります。磨砕、混合、微粒化、精錬、調温、充填の各工程において、高い精度と安定性が要求されます。たった1つの原料が一時的であっても不足すれば、満足のいく品質には及びません。食品加工の分野では安定した製造をするために、温度に敏感な原料を素早く加工する必要があります。生産ラインの不具合によってスムーズに加工できなかった場合、メーカーは消費者からクレームを受けたり、イメージを損なったりすることになります。これは、競争の激しいお菓子などの嗜好品分野では深刻なリスクと言えるでしょう。さらに、対象ロットすべてを損失することは企業の収益に影響を与え、遅延や未納が発生した場合には、販売業者との関係を損ないます。
安定した品質のための工程信頼性
「生産設備の重要な箇所で安全クラッチを使用すれば、スムーズな工程を確保しながら、設備停止や設備損傷の防止に役立ちます。」と、R+Wの販売責任者であるJörg Stangは説明しています。R+Wのスタッフは、チョコレートの製造工程のうち、どこで故障が発生すると致命的かどうかを理解しています。カカオ豆の磨砕工程では、一定時間確実に圧搾し続けることが必要です。したがって、駆動装置からグラインダーへの一貫したトルク伝達を確保することが不可欠となります。駆動装置が故障するとカカオマスの完成度に影響し、その後の加工品質が低下します。同時に、許容トルクを超えると、歯車が破損する危険性があります。その結果、多少なりとも設備は停止し、ジャスト・イン・タイムの生産を脅かす事態が発生します。大きく破損した歯車は、費用も時間もかかる修理が必要となり、生産ラインが停止してしまうこともありえるでしょう。
一貫したスムーズな製造工程は、次の混合工程でも、口の中で溶けるクリーミーなチョコレートを製造する鍵となります。これは微粒化と精錬工程も同様で、品質の良し悪しを大きく左右します。特に調温されたチョコレートは、ちょっとした変化に非常に敏感です。カカオマスの調温は、ベルトコンベアで搬送しながら冷却トンネル内で行われ、故障の影響を受けやすいです。そのため最適な冷却曲線と表面構造を実現できる、バックラッシやミスアライメントのない、高い一貫性と信頼性を備えた駆動装置が必要です。これが理想的な口当たりを実現するショコラティエ。前述のチョコレート製造の例は、食品製造における絶対的な信頼性の大切さを明確に示しています。適切なカップリングを適切な位置に取り付けることを含め、設備の設計には原料やレシピを選択するのと同じくらいの正確さが要求されます。
食品産業の事例
これらの製造工程で使用されるカップリングは、安全対策の決め手となります。プラントエンジニアリングにおける精密カップリングの本来の役割は概して、偏心、偏角、エンドプレイを許容しながら、確実でゼロバックラッシの動力伝達を確保することです。もちろん同時に高い稼働信頼性も必要です。また食品加工産業においては厳しい衛生条件を満たす必要があります。そのためR+Wでは、この分野のカップリングには最高品質のステンレス鋼のみを使用しています。ベローズ形カップリングは、高い剛性と精密な位置決め精度による確実なトルク伝達が可能で、ミスアライメントも許容します。さらに安全クラッチの場合は、トルク過負荷から保護する場合に特に効果が期待されます。このため、食品加工に用いられるデリケートな設備にとって理想的です。
もっとも重要な部品はミスアライメントを吸収するステンレス鋼ベローズです。ベローズは、許容トルクやミスアライメントなど実際の条件に基づいて設計されます。回転方向に最大の剛性が必要とされる一方、その他のすべての方向には、ミスアライメントによる荷重を抑え下流部品の損傷を防ぐために、剛性は最小限でなければなりません。この偏心、偏角、エンドプレイの許容は、駆動系全体の高い稼働信頼性を確保する上で重要な役割を果たします。「加速トルク、共振周波数、ねじれ角のようなパラメータも金属ベローズ形カップリングの設計において重要な役割を果たします。R+Wはイナーシャ、組み立てやすさ、コストパフォーマンスなどの基本条件に先ほどのパラメータを考慮し設計します。」とJörg Stangは付け加えます。高速回転向けの用途には、動バランス取りを行った高精密のカップリングも取り扱っています。
トルク範囲0.05~10,000N・m
もっとも小さな金属ベローズ形カップリングMKシリーズは、内径1~28mm、許容トルク0.05~10N・mでご用意しております。例えば、ポテンショメータや計測・制御システムに関連する正確な回転動力伝達のために使用することができます。剛性の高い金属ベローズにより、MKシリーズは、ミスアライメントを許容しながら、同時に、極めて正確に測定を行うのに役立ちます。Jörg Stangは「MKシリーズは、すり割りの入ったクランプタイプをはじめ、半割クランプ、テーパーロック、中空軸への締結が可能なコレット軸タイプのものまで、多くのの締結方法があり、どんな用途にも対応しています。取り付けが簡単な分離アダプタタイプもご用意しており、ゼロバックラッシで、素早く・簡単に取り付け可能な設計が特長です。」と説明します。ガラス繊維入りFRP製の特殊なテーパー部は、カップリングの電気絶縁性と断熱性を実現しながら、ゼロバックラッシでメンテナンス不要であることを保証します。テーパー部には異なる2種類の材料を使用しているため、カジリが発生しにくいようになっています。これらの分離アダプタタイプのカップリングは、アダプタ接合部をシングルポジションまたはマルチポジションからお選びいただけます。
トルク過負荷による損傷を最小限に
防爆タイプのベローズ形カップリングでは、ベローズが破損した場合に連動するジョーが噛み合うことでベローズの破壊を防ぎ、カップリングの信頼性が向上します。これは例えばロータリエンコーダとの接続の際に必要でしょう。「R+Wの手にかかれば、要素が追加されてもカップリングの大きさは変わりません。このことは、トルク過負荷が発生しベローズが破損した場合のトルク伝達機能の信頼性を大幅に向上させます。」とJörg Stangは説明します。カップリングの機能を最大限に活かし、確実にトルクを伝達しながらミスアライメントを許容するには、カップリングを正確に取り付けることが重要です。だからR+Wでは小型のMKシリーズだけでなく、最大10,000N・mのトルク伝達が可能なMBKシリーズも取り扱っています。同心度を確保するために、MBKシリーズは高精度マンドレルの上で組み付けを行います。MKシリーズと同様、MBKシリーズにもさまざまなサイズと締結方法があります。MBKシリーズの開発では、取り付けやすさと慣性モーメントの低減に特に注意を払いました。MBKシリーズはゼロバックラッシで、工作機械、包装機械、印刷業界などで使用されています。
信頼性が重要
クリンゲンベルグのカップリング専門メーカーであるR+Wは、機械およびプラントエンジニアリングの技術者に幅広い標準品を提供しています。標準品は、搬送装置やロータリエンコーダなどの用途から、主駆動軸や形削り盤の工具交換用ローラーまで、あらゆる場所で使用できます。カップリングは、お客様の仕様に合わせて個別に設計することも可能です。静バランスまたは動バランス取り、フランジ、キーまたはクランプ締結、あるいは著しく高いトルクまたは高温に対応する必要がある場合は溶接による組み付けなどさまざまな仕様をご用意しております。R+Wは、標準的な金属ベローズ形カップリングに加えて、どのような条件にも対応できるよう、お客様に合わせた製品を提供しています。
「生産ラインの信頼性を確保するために設計されたカップリングは、まずカップリングそのものに絶対的な信頼性がなければなりません。ステンレス鋼を使用しているため、R+Wのカップリングは衛生条件を満たすだけでなく、食品製造での腐食環境下でさえもメンテナンス不要であり、長持ちします。さらに、カップリングの多くは特に耐熱性および耐寒性に優れており、‐30~+100℃の範囲でも問題なく作動します。」―Jörg Stang
白と黒で時代の流れに乗る
R+Wはこの1年で明確な差別化を図っており、ハノーバーメッセでは、白と黒に分けて展示しました。白は精密製品分野、黒は重工業分野を表しています。代表のFrank Kronmüllerは「当社の専門化戦略は、カップリング部品に対する要求がより特殊になるにつれて必然的なものでした。駆動技術における新たな用途の数は増え続けており、特殊なカップリングが必要とされています。これは、どのシリーズにおいてもかなり特殊な製品を求められていることから明らかでしょう。」と説明しています。
ハノーバーメッセで注目されていたのはエネルギー分野でした。この分野では、大規模な発電所による一方的な供給から、消費者と生産者の相互ネットワークへと、市場が大きく変化しています。消費者は生産者にもなり、その逆の場合もあるでしょう。「統合エネルギー」への傾向は、展示会でのメイントピックの1つです。バイオガスプラント、マイクロガスタービン、風力、水力による発電などにはすべて、適切なカップリングが必要です。
エネルギー分野の事例
例えば風力発電の場合、いわゆるピッチ制御システムは、ロータブレードの傾斜(ピッチ角)を測定し、監視し、制御することで、風の状態が変化にしても一貫した能力を発揮することができます。正確な位置決めには、ゼロバックラッシでメンテナンス不要のベローズ形カップリングが使用され、正確な位置決め、高い再現性、信頼性の高いトルク伝達を組み合わせています。R+Wは、MBK2シリーズを基に大型洋上風力発電所向けの特殊品を開発しました。外洋での厳しい環境条件に耐えることができるように、鋼製のハブには特殊な表面仕上げを施しており、ハブとベローズは溶接で接合されています。
カップリングはバイオガスプラントでも活躍しています。メタンがガスエンジンに送り込まれ、レシプロエンジンで発電します。このバイオガス基質は、前処理の破砕工程において、石などの固体粒子の不純物が混ざり、システムにコストのかかる損傷をもたらすことがあります。そこで、信頼性の高い保護装置として、振動減衰および衝撃吸収が可能なエラストマ形カップリング付き安全クラッチをご提案しました。例えば駆動被動間を接続するためにMELS2シリーズを実際に使用しました。さまざまなショア硬さが選択できるエラストマインサートは、あらゆるミスアライメントを許容し、用途に応じた振動や衝撃を吸収します。固形物によってツマリが生じ、結果としてトルク過負荷が生じた場合、あらかじめ設定された遮断トルクによって、カップリングは、ばねを利用したボールソケット式の機構により、数ミリ秒以内にエンジンとロータを遮断します。これにより損傷を防止し、設備停止時間を短縮します。
3つ目の例はマイクロガスタービンです。分散型発電設備で使用されることが多く、高負荷に曝されることも少なくありません。あるプロジェクトでは、小型ベローズ形カップリングが年間を通じて常に10N・m、7万r/minの速度で確実に作動する必要がありました。R+Wでは、MK 2/100を基に、特殊なベローズによって必要な安全マージンを確保し、ベアリングの損傷がない限り工程内で発生する復元力を低減する特殊な製品を開発しました。標準品の約4倍のトルク過負荷に耐え、作業者に十分な信頼性をもたらすでしょう。
自動化の精度
ハノーバーメッセで注目され続けているもう1つのトピックは自動化です。高度に自動化された工業製品の生産ラインには、ガントリーローダーや産業用ロボットなどに正確なモーションシステムが必要です。ダイナミックな多関節ロボットは、多くの生産ラインにおいてサイクルタイムの短縮に貢献しています。これには、速度、精度、加速度など、高い要求に対応するように設計された駆動部品が必要です。
R+Wは、MELシリーズのエラストマ形カップリングを、産業用ロボットなどの用途向けに開発しました。伸縮性のあるエラストマインサートは、高い柔軟性と優れた強度を同時に実現します。振動や衝撃の減衰効果を持ち、軸のミスアライメントを許容することができます。
エラストマ形カップリングの設計には多くの条件が関わります。荷重、起動、温度要因は、エラストマインサートの耐久性に影響します。インサートは、様々なショア硬さが選択できるため、振動減衰性、剛性、ミスアライメント許容において、ほぼすべての用途に対して適切な解決策が見つかるでしょう。位置決め精度が優先される場合には、ベローズ形カップリングを選択することもできます。R+Wの設計者は、適切なカップリングをおすすめできるように経験を積んでいます。
カップリング業界のインダストリー4.0
自動化と密接に関連しているデジタル化は以前から注目を集めており、無人化による自動化レベルの向上に伴い、精密な作動部品や機能的な安全対策が求められています。インダストリー4.0の時代には、カップリングは生産性を向上させる重要な役割を担い、必要な安全性を確保することができます。
Kronmüllerは「最新の自動化生産ラインでは、考え抜かれたデジタル戦略「インダストリー4.0」でも、カップリングは重要な部品として残っています。これはトルク伝達だけではなく、安全装置としての役割も担います。」と強調します。例えば、機械式安全クラッチが有利な点は、駆動系を遮断するまでの速度であり、これは、電子式あるいはセンサによる手段を大きく上回り、不具合も発生しにくいことが挙げられます。
「電子制御によって遮断する場合には、少なくとも15~17ミリ秒かかります。安全クラッチは3~5ミリ秒以内に反応するため、勝者は明らかです。さらに、センサは不具合の原因となることがあるため、意図せぬ作動停止をしないよう定期的に確認する必要があります。」1つの軸に対して必要なのは1つの安全クラッチだけで、容易に調整ができ、さまざまな取り付け方法に対応しています。「これはカップリングの大きなメリットとなるでしょう。」とKronmüllerは述べています。
R+Wはお客様の生産ラインのデジタル化をサポートしたいと考えており、常に新しい用途を探しています。同時に、標準品についてもできる限り多くの用途に対応できるよう、既存の製品ラインナップを編成し直し、拡大しました。サイズの整理と部分的な再設計により、R+Wは今後の傾向に十分対応できると考えています。
ハノーバーメッセについて
「私たちにとって、ハノーバーメッセには2つの目的があります。1つは当然、私たちの技術と製品を紹介し、新しいお客様に良い印象を持ってもらいたいと思っています。これが展示会の最重要点です。もう1つは、ここで紹介されているトレンドとイノベーションです。市場の方向性や、どのような用途に対応する必要があるかを見極める良い指標となります。展示会では、当社の製品を使用することにより改善可能な技術を体験できます。これはとても刺激的なイベントです。」—Frank Kronmüller
カップリングを、塵埃の多い環境や液体、強力な洗浄剤などと接触する可能性のある環境で使用する場合に備え、R+Wは内部部品を密閉することを可能にしました。これは同時に、カップリングからグリースが漏れないようにする機能も果たします。この設計では、全部品がハウジングに完全に内蔵され、特殊なシールが施されます。特別に開発されたOリングは、カップリング本体に装着され、大きな移動リングで覆います。この製品は、外部からのあらゆる影響から保護し、クリーンルームでも使用できます。
製品ラインナップの方針
「カップリングは繋げるのになくてはならない存在です。しかし、本当にカップリングが特別な存在であり、差別化されているところは、付加的な機能の部分です。R+Wではお客様と密に連携し、特殊な用途向けの製品を実現しています。これらの特殊品は、技術的な観点において常に一歩先を行くものであり、市場のニーズに応えるものであるため、私たちとしても高く評価しています。特殊品の開発により得られた知識は、標準シリーズに順次展開され、多くのお客様にメリットをもたらします。どちらも当社にとって重要ですので、将来的には特定のカップリングを指定する必要はありません。」—Frank Kronmüller