page top

MST4|記事一覧

ギヤポンプの保護


ギヤポンプは、ハウジング内で回転する2つのインボリュート歯車の外周を通して液体を搬送するために使用されます。液体の流量は、歯車の速度によって制御されます。R+Wが開発した特殊な安全クラッチは、ポンプ内に異物が入ってツマリが発生した場合にギヤの損傷を防ぎます。


ギヤポンプを使用して、粘性のある (ゴム状に近い) 液体を搬送するお客様から問い合わせがありました。この液体は、固まるのを防ぐため、高温で搬送する必要があります。また、この液体は、金属片などの異物によって汚染されることが多く、金属探知機が設置されていますが、必ずしもポンプ内への進入を防ぐことができるとは限りません。これらの固形物がポンプに入ると、詰まりを起こして歯車を損傷し、費用のかかる修理につながります。

 

ツマリが発生すると

この製造工程では、液体が均質な状態で搬送されることが不可欠です。固形物が詰まって修理が必要な場合は、まずシステムを冷却する必要があります。それまではポンプを分解することはできません。しかし、搬送中の液体が冷却中に固化すると、ポンプの内部を洗浄する工程は複雑になり手間がかかります。つまり、生産ラインは数時間にわたって停止するため、設備停止によるコストは膨大になります。もしこの工程で部品が破損すれば、高価なギヤ本体の費用に加えて、さらに費用がかさむことになります。ギヤは特殊品であることもあり、納期は長く、その分価格も高くなります。

R+Wの安全クラッチは、このような用途や課題にとって有効な投資であることが証明されています。このポンプにはMST4タイプの(図1)安全クラッチを選定しました。MST4には重工業分野向け安全クラッチの両側に歯車形カップリングがついており、モータとギヤポンプの間に取り付けられます。耐久性の高いMST4歯車形カップリングは、小さなサイズで大きなトルクを伝達しながら、軸のミスアライメントを許容します。最も重要なのは、安全クラッチを使用すれば、ギヤポンプの損傷も防止できるということです。固形物によるトルク過負荷を防ぐ場合、あらかじめ設定されたトルク値でカップリングを遮断し、モータとギヤポンプを切り離します。

モジュール構造により、1サイズにつき3段階のトルク調整範囲を設定できます。つまり、1つの製品で様々な用途に対応できるのです。また、トルクモジュール(図2)はカップリングの外側から容易に脱着できるため、カップリングを取り外すことなく調整範囲を変更することができます。この用途では、トルク調整範囲1.2~4.0 kN・m、遮断トルク2.27 kN・m、外径は220mm、全長は350mmでした。

 

広範囲にわたり連続してトルクを調整 

すべてのトルクモジュールには、お客様指定荷重と、最小値および最大値を示すマーキングが付いています。この用途では、お客様が調整ナットを用いて遮断トルク値を容易に調整できるように、特殊な目盛りも追加しました。トルクモジュールは、ご要望に応じて調整できないタイプも選択いただけます。

この案件では、安全クラッチを使用することで著しく性能が改善しました。カップリングは、そもそもツマリが発生することそのものを防ぐことはできませんが、高価な歯車の損傷を防ぎ、設備の停止時間を大幅に減らすことができます。そのためお客様は、初めて遮断が発生した時点で、その費用対効果を実感することになるでしょう。

MSTシリーズの安全クラッチは、1軸および2軸用に様々な仕様とサイズがあり、200~25万N・mの遮断トルクに対応可能です。条件によっては、100万N・mを超えるような特殊な製品もご用意しております。

 

歯車形カップリングのメリット 

歯車形カップリングは、MST4のように安全クラッチと組み合わせて使用できるだけではありません。MBZシリーズの歯車形カップリングは、純粋なカップリングとして208万N・mまで対応しています。例えば、キー締結またはしまりばめによる締結が可能な軸穴を備えたコンパクトなタイプ(図3)や、スペーサの長さが選択可能なタイプ(図4)も選択可能です。

MBZシリーズの歯車形カップリングは、小さなバックラッシと高い剛性でトルクを伝達します。理想的なトルク伝達を保証するために、ハブ側とフランジ側の両方の歯車が高精度の歯車加工機で製造されています。これによって偏心、偏角、エンドプレイを許容することが可能になります。最適な本体に最適な歯数のインボリュート歯車の形状になっており、歯車形カップリングは、従来の他社製同等品よりも効率的で耐久性に優れています。歯車のかみ合い率が高いことにより歯にかかる負荷は低く、同じ空間でもより高いトルクを伝達し、キーを2か所用いることでさらに高い出力密度を実現できます。特に条件の厳しい用途の場合、同じサイズで許容トルクを45%アップすることができる代替材料もご用意しております。MBZシリーズの設計は、全体的な摩耗を防ぐだけでなく、永くお使いいただけるようになっています。

 

取り付けは簡単で、柔軟性が高く、頻繁なメンテナンスも不要 

出力密度の強みに加えて、MBZシリーズが魅力的な選択肢であるのには、その他多くの機能が挙げられます。オプションでシールを追加することにより、必要な高性能グリースを長期間保ち、メンテナンス頻度を低減できます。また、MBZシリーズの取り付け、組み立てには細目ねじが使用されており、締め付けトルクは小さく、取り付けが容易です。このシリーズのさらなるメリットは、追加のブレーキディスクや延長ハブ、またはハブを反転させDBSEを広げるなど、お客様の条件に合う無数の特殊仕様は言うまでもなく、その汎用性の高さでしょう。ご要望に応じてその他のオプションもご用意しております。特別な条件がある場合には、ご相談ください。

Print🖨
 

 

駆動技術におけるカップリングの条件


部品としてのカップリングに求められるが満たすべき条件は、特殊さを増しています。駆動技術における新しい用途には、特殊なカップリングが必要です。したがって、分野に応じてカップリングを分類することがメリットとなります。


機械工学は多面的で非常に面白い分野です。従来からの機械の概念では、高い剛性や速度、短いサイクルタイムで100分の1mm単位の高精度な位置決めを必要とます。包装機械、印刷機、産業用ロボット、自動化システムなどは、このような条件が求めれられることも少なくありません。その一方で、従来の概念とまったく異なる課題に直面する場合もあります。その対象となるのが通常では考えられないほどの塵埃の蓄積、並外れた温度変化、非常に強い力などの極端な環境条件を満たさなければならない機械です。これは製鉄所や鉄工所、海洋工学、または調整・工程技術などの分野に当てはまり、正確さだけでは日々の要求に対応できません。

このような背景に対してR+Wは、設計者が世界中のどこからでも、特定の用途に合う完璧なカップリングを素早く見つけられるよう、2つの分野を設けました。「精密機器」と「重工業」の2つの分野により、上記の用途すべてのパターンに対応するカップリングをご用意しております。精度の高いカップリング界の牽引役として、R+Wはここ数年、重工業分野で飛躍的な発展を遂げてきました。R+Wは用途ありきの製品に特化しているため、今日では多くの分野で「カップリング」の代名詞となっています。それでは、様々な用途について説明します。

 

鉄鋼・非鉄金属分野 

鉄鋼・非鉄金属加工は非常に大きな分野です。この分野のお客様との取引が始まったのは20年前のことです。最初は熱間圧延鋼メーカからの、冷却ラインに新しいカップリングが欲しいという問い合わせでした。このライン上で圧延された帯鋼は、巻き取り機でコイルを形成する前に、冷却スプレーによって1,300°C超から約800°Cまで冷却します。冷却ラインは個々に制御された50以上のフィードローラからなり、これらがローラコンベアを構成しています。従来使用されていたシンプルなジョーカップリングには、ミスアライメントを許容するためにポリアミドや樹脂などが使用されていましたが、熱間圧延鋼の高い放射熱により破損することが多くありました。コストのかかる設備停止時間に加えて、取り付ける数の分だけ交換用を在庫する必要があり、余計なコストが発生していました。スペースが小さいことから、取り付け・取り外しには非常に時間がかかり、その分のコストもかかっていました。そこでR+Wは、標準のベローズ形カップリングMBK2を基にした製品を開発しました。このカップリングは、非常にダイナミックなサーボドライブと使用するために、軸のミスアライメントを許容すると同時に、トルクを伝達する際には剛性が高く、長年人気のある商品です。今回は過酷な環境に合わせるため、改良が加えられました。クランプハブは通常の高強度アルミニウム製ではなく、鋼製に変更しました。また、特殊な焼き入れ工程によって生成された酸化皮膜は、冷却水に対して腐食からの保護に優れています。ベローズが破損した場合の飛散防止機能も追加し、安全性を強化しました。ステンレス鋼ベローズがトルク過負荷や不適切な取り付け方法によって損傷を受けた場合でも、内部の固定機構により、トルクを確実に伝達することができます。これにより、倉庫の在庫と、カップリング交換に必要な設備停止時間を、年に1回の定期点検のみに減らすことができます。

 

高トルク化 

また別の例では、最大トルクまで保護することが求められました。上下ペアになった、垂直方向に調整可能なワークロールからなるシステムは、鋼板の平坦度を調整する役割を果たします。システムには30KWの電気モータを使用しており、1,150r/minで約250N・mのトルクを発生します。従来使用されていたブレーキディスク一体型のエラストマ形カップリングは、トルクをトランスファーギヤボックスの入力軸に伝達していました。これは、歯車を順番にシフトダウンさせ、ユニバーサルシャフトでギヤボックスの出力シャフトに接続された上下のワークロール間にトルクを分配します。

調整される前の鋼板の厚さは常に同じとは限らないため、ワークロールに入る前に傾きやツマリが発生することがあり、極端に大きなトルクがかかることがあります。これは週に数回の頻度で発生します。このトルクは時間の経過とともに、ユニバーサルシャフト、オイルワイパー、ロール表面などの部品に繰り返し損傷を与え、高価なギヤボックスの損傷に至ることもあります。この問題を解決するためにR+Wは、精密安全クラッチと一体化したエラストマ形カップリングを紹介しました。この安全クラッチはばねを利用したボールソケット式で、設定されたトルクに達すると、数ミリ秒以内に動力を遮断します。トルクが再び通常に戻ると、カップリングは自動的に再連結し、トルクを伝達し続けます。動力の遮断は、移動リングの移動を近接スイッチで検出することができ、すぐに機械を停止させることができます。ブレーキを保持するのに必要なブレーキディスクもカップリングに含まれています。またR+Wの技術者は、既存のカップリングを置き換えることで他の部品の修正などが発生しないように、カップリングの形状を適応させました。お客様にとっては無理のない置き換えで済み、将来的には設備の可動率が向上するでしょう。

設備の可動率を高めるという課題は、生産ラインの担当者に共通しており、自動車産業用の冷延鋼鈑メーカにも当てはまります。ある例では20年もののワークロールを使用した冷間圧延機の部品を交換する必要がありました。従来の駆動源は1,100KWの低電圧モータで、歯車形カップリングを用いて、トルクをヘリカルギヤ装置の入力軸に伝達していました。これは純粋なトランスファーギヤボックスとしてワークロールを作動させます。2本のギヤボックス出力軸とワークロールはスピンドルギヤで連結します。基本的にこのカップリングは、より大きな両軸端間距離を締結するための中間軸を備えた金属製の特殊な歯車形カップリングです。スピンドルギヤとギヤボックスの出力軸の間には、トルクリミッタの機能を持った流体継手もあり、これにより交換作業が困難であることがわかりました。故障発生後に稼働を再開させるのは複雑で、時間を要しました。カップリングの再試運転に必要な修理キットも、在庫として保管する必要がありました。これらの修理キットは高価で、必要なときに入手できないということがよくあります。ここでもR+Wが状況の改善に貢献しました。スピンドルギヤはMBXタイプの高剛性ベローズ形カップリングに置き換えられ、厳しい生産条件に対応しました。

 

歯車形カップリング一体型重工業向け安全クラッチ  

今回は流体継手をなくし、MST4タイプの安全クラッチに置き換えました。モータとギヤボックス入力間の標準的な歯車形カップリングを置き換えたため、据え付けには影響がありましたが、結果的に、大きなメリットがもたらされました。

  • 交換部品や修理キットの在庫不要
  •  安全クラッチはMST4が1つでOK
  • シンプルな操作性により、特別な技術知識のない作業者も、故障発生時に迅速かつ容易に再試運転を行うことが可能

MSTシリーズは、小型の精密分野安全クラッチと同様にボールソケット式ですが、より高い遮断トルクを実現するために独立してばね荷重を受ける複数のトルクモジュールを利用しています。タイプによっては、最大12個のトルクモジュールを取り付けることが可能です。トルクモジュールの設計は非常に単純です。焼き入れされたクラッチボールが、スクリュがついたハウジングによって軸方向に予圧を与え、皿ばねを圧縮します。クラッチボールの半分はトルクモジュールから飛び出ており、対応するソケットにセットされます。クラッチボールに作用する円周上の力が設定トルクに達すると、ボールは数ミリ秒以内にトルクモジュールのハウジング内に戻ります。ロック機構により、ボールが勝手に外へ戻ってしまうのを防ぎます。このとき、駆動被動間は切り離され、駆動系が保護されます。故障の原因が取り除かれたら、Pハンマーでトルクモジュールの背面に衝撃を加えるだけで、カップリングは再連結されます。

 

特殊仕様も簡単に

また、安全クラッチをニーズに合わせて個別に調整することもできます。MSLシリーズはモジュール式のため、さまざまな組み合わせが可能です。すべての安全クラッチは、クリンゲンベルク工場で指定の遮断トルク値に設定します。新しい構造により、遮断トルク値を現場で変更することもできます。トルク範囲は調整リングに目盛りで示されており、設定値を変更する際の目安になります。遮断トルク値を調整しても、製品の機能や性能に変化はありません。

カップリングを、塵埃の多い環境や液体、強力な洗浄剤などと接触する可能性のある環境で使用する場合に備え、R+Wは内部部品を密閉することを可能にしました。これは同時に、カップリングからグリースが漏れないようにする機能も果たします。この設計では、全部品がハウジングに完全に内蔵され、特殊なシールが施されます。特別に開発されたOリングは、カップリング本体に装着され、大きな移動リングで覆います。この製品は、外部からのあらゆる影響から保護し、クリーンルームでも使用できます。

 

より高い遮断トルク  

年を追うごとに、より高い遮断トルク値に対応する、より大型のカップリングに対する需要が増加しています。早くも2014年にR+Wは大型ギヤボックスメーカから、298kN・mの遮断トルクに対応したMSTを受注しました。そうしている間に、100万N・mの壁を超えることが出来ました。デザインの面ではまだ限界に達しておらず、将来の見通しは明るいでしょう。

時代の変化やビジネスの発展に伴い、R+Wは「精密製品分野カップリング」市場のリーダーとしての評価以上の評価を得ており、現在では「重工業分野カップリング」の高品質サプライヤーとしても認知され、競合他社にはない独自の優位性を持っています。同社の伝統的な設計に対する柔軟性は、多様な機械に精通していることと相まって、過酷な条件に耐えうる駆動技術に貢献しています。この記事で説明したような金属加工の場合も、あるいは過酷な条件下で信頼性の高いカップリングを必要とする他のさまざまな業界の場合でも、成長中の重工業分野は、精密製品分野と同様に、適切なカップリングが見つかる可能性がますます高くなっています。

Print🖨